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swimlibrarianのブログ。ほぼ図書館の話題。ときどき大学の話。(たまに水泳ネタ)

Code4Lib JAPAN Conference 2013

ブログを始めてみました。
しばらく前から書こうかなーと迷いつつ腰が重くて踏みだせてなかったのですが、そろそろ出る『大学の図書館』に「情報発信します」と書いたところでもあり、また8月末に参加したCode4Lib Japan Conference 2013は、SNSに感想を書くだけではもったいないようなイベントでもあり…と、いろんなことがちょうど重なったので、始めてみることにしました。
どんな更新頻度になるかわかりませんが、ぼちぼちやっていきたいと思います。


初エントリーは、「書こう」という気にさせてくれたCode4Lib JAPAN Conference 2013。

もう2週間以上前の話ですが。思い出しながら書いてたら長くなってしまいました。

 

 

Code4Lib Japan Conference 2013

サイト:http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2013

Togetterhttp://togetter.com/li/556778

Ust録画:http://www.ustream.tv/channel/code4lib-japan-2013

 

本家アメリカのCode4Lib Conferenceに行ってる人たちが何か楽しそうだなあと思ってたのと、今回開催地が南三陸町と聞いて参加することにしました。
東北の被災地は、宮城県名取市岩手県を何ヶ所か(それも立ち寄り程度)しかまだ行ったことがないので、開催地に惹かれたのは大きかったです。

現地へは前日入り。仙台で1泊しても良かった!と旅の手配をすませてから気づいたけど、更地のままの沿岸部や仮設のさんさん商店街、南三陸町図書館などなど、少しは南三陸町を見てまわれたので結果オーライでした。招待講演者Dan Chudnovさんを交えた前夜祭も出られたし。

翌8月31日からカンファレンス開始。
実は始まるまで場違い感、というか話についていけるのかと心配してました。
私自身はICTにはまったく明るくなくて、開発どころか単なる1ユーザとしても疎い方だと思っています。そんな自分がICTを使いこなしていろいろつくり出してしまうような人たちの話を聞いて理解できるのかなー…と。
ただ、理解できるようにはなりたいし、自分で開発とかできるようにならなくても、技術者の人の話がわかるようになるだけで自分にできることはかなり広がるはず、と思って飛びこんでみました。
で、結果。心配してたよりはついていけました。用語に聞き覚えがある、という程度で、ほんとに理解できたのかというとはなはだ怪しいのですが。
ここ半年くらい、『情報の科学と技術』とかの雑誌をときどき読んでいて、そのおかげか「あーこの言葉あの記事で出てた」とか「あの論文と似た話かなあ」とか思いながら、カンファレンスでの発表を聞いてました。
他にも「ICTそんなに詳しくない」という人はいっぱいいたし。気が楽になりました。


基調講演「ライブラリサービスを支える技術」 大向 一輝氏

最初に「Code4Libなので技術の話をします」という前置きで始まりましたが、同時にサービス設計の話でもあるなぁと思って聞いていました。CiNii Articlesという大規模なサービスのレベルを切り分けて優先順位をつけ、それを実行するための技術も切り分けて集約してコストも下げて・・という軌跡が語られていて勉強になりました。
Webサービスだけに限らず、複雑化したシステムやサービスをシンプルに整理しなおすためには、隅々までの現状把握と、そのサービスや関連分野に対する深く広い知識が必要なんだということも再確認しました。そうでないと従来以上のものをつくることはできないんだろう、と。
大向さんのお話はいつも聞いていてわかりやすいです。細かい内容はスライドを見るとだいたい掴めるのでは、と思うので関心のある方はぜひ。
http://www.slideshare.net/ikki.ohmukai/130831-code4libpub

 


招待講演「Think Locally, Code Globally」 Dan Chudnov氏

アメリカの本家Code4LibのDanさん。アメリカの技術系ライブラリアン達のコミュニティの歩みからCode4Libの立ち上げ、その後の10年を語ってくださいました。

「ラフなコンセンサス」と「動くコード」がCode4Libの文化、というのが1つめの大きなキーワードでした。つまり、何人かが「それ良いね!」と一致したり、ゆるい合意ができたら見切りスタートでコードをとにかく書いてみて、書きながら練っていく文化がCode4Libの基本、ということなんだと思います。

コミュニティを通してつながることの重要さもキーワードの1つでした。

新しい参加者を誘い入れること、その一方で、コミュニティの規模が大きくなると「ラフなコンセンサス」という文化が活きにくくなったり、新しい参加者に敷居が高くなったり、という新しい問題も生まれてくる、などなど、Code4Libの歩みを踏まえたお話でした。

スライドはこちら→ http://www.slideshare.net/dchud/20130901-code4libjapan

聞いていて、オンラインでつながりつつ実際にも顔を合わせることの意義は、どの国、どの分野でも共通だなとまず思いました。
それから、コードはカンファレンスの場を離れた後も簡単にシェアできるし開発もできていいなぁ、他の、例えばサービス設計のやり方とかも共有できたらいいなぁとか思ったところで、「Lifo-wikiってそういう機能を持ってるんじゃないか?」と思い出したのでした。「イベントやるときのあんちょこ」なんてまさにLifo初期の活動から生まれたアウトプットが共有されてる形だよなぁと。
現事務局メンバーとしては、これまでの積み重ねをありがたく思うと同時に現状が申し訳なくもあり。
帰ってきてから、コミュニティを創ること・大きくすること・維持することを改めて考えたりしました。

余談ですが、Danさんからは、素敵なおみやげもいただきました。図書館の名前が刻まれたお箸。家でさっそく使っています。

f:id:swimlibrarian:20130901114325j:plain

 



他、講演・発表やライトニングトークで印象に残ったものの感想も。

特別講演「東日本大震災からの図書館の復旧・復興支援とITの活用」熊谷 慎一郎氏
http://www.slideshare.net/shinichirokumagai3/20130831kms
宮城県図書館の皆さんが県内の図書館の復旧作業を、直接現地に行って支援されているのは知っていましたが、各図書館の状況把握や中間組織として情報収集のためにやってきたことは、今回初めてお聞きしました。
都道府県立図書館の本来機能」と、「情報収集のためのITツールは普段から活用しておくこと」という言葉に納得でした。

 


Wiki協同入力を阻害する3つの恐怖症とその対策―saveMLAKを例として―」江草 由佳氏
http://www.slideshare.net/yegusa/2013-0901c4ljp2013yegusa
「あぁそう言ってもらえるとすごくホッとする」というお話でした。
wikiの入力くらい簡単なんだから自分で何とか頑張ればいい」というのは確かに一理あるし、自分でもそう思うんですが、wikiに限らずICTに明るくない人間からすると、敷居は低ければ低いほどありがたいのです。
ただ、そうやって教えてもらってフォローしてもらう側にいつまでもいてはいけない、とも同時に思いました。ちょっとずつでも慣れていって、自力でできるようになったら今度は他のわからない人のフォローをすればいいんだと。
そうでないと、いつまでも教わるばかりでは受け身すぎるし、フォローしてくれる人に負担がかかり続けるわけですしね。


「Hot topics at IFLA WLIC 2013」天野 絵里子氏
http://www.slideshare.net/amanoeriko/hot-topics-at-ifla-wlic-2013
国大図協の派遣でIFLA(に限らず国際会議)に参加、というのは初めて聞いたので、天野さんには前日からいろいろ質問していました。(どうもありがとうございました)
派遣の申請時期と会議の申込時期が合えば可能なんだそうです。知らなかった。
今年の国大図協派遣事業自体も、SNSやブログでリアルタイム報告をしたりして、参加するイメージを持ちやすくしていますね。
天野さんの発表の時には、写真がいっぱいで会議の様子がよくわかりました。ベストポスター賞を福島県の司書さんが取ったのも素晴らしいニュース。
雑誌に載る参加報告なんかで見るだけだったIFLA会議が身近に感じられました。



発表以外に、参加者の中にはSNSで名前だけ知っていた方がたくさんいらして、行く前からわくわくしていました。実際にあいさつできて嬉しい方ばかりでした。

 


今回は、公共図書館の方とたくさん知り合いになれたのも良かったところです。
大学図書館系のイベント、逆に公共図書館系のイベントで会うと、つい「大学では○○で…」と館種に基づいた話になりがちなんですが、今回は発表されたことについて個々人としての感想とかが聞けて、あんまり館種を意識しなかったなと思います。
他の場でも、そんな風にフラットに話せたら良いのですが。場のテーマによって変わったりするのかな。


課題に感じたのは英語でした。

Danさんは講演の際ゆっくり話してくれたし、かなり聞き取りやすい発音だったと思うんですが、それでも単語が切れ切れに聞きとれる程度で文章にならないので意味が取れない。高久さんと加藤さんの翻訳ツイートがとてもありがたかったです。

開催地も内容も、たいへん良かったです。

またひとつ、知らなかった世界が見えました。