メモ:文化資源のデジタル化に関する各種ガイドラインの概要とその活用へのアプローチ
11月28日、情報科学技術協会の2014年度「じょいんと懇話会」に参加してきました。
テーマは「文化資源のデジタル化に関する各種ガイドラインの概要とその活用へのアプローチ」、講師は関西大学の研谷紀夫先生でした。
以下、内容のメモ。
- 文化資源デジタル化のガイドライン4つを紹介。
- 国立国会図書館資料デジタル化の手引
- 震災関連デジタルアーカイブ構築・運用のためのガイドライン(総務省)
- デジタルアーカイブの構築・連携のためのガイドライン(PDF・総務省)
- 文化資源のデジタル化に関するハンドブック(東京大学・凸版印刷)
- 1.と4.は比較的ページ数が少なく、文化資源デジタル化の概要をつかむのに良い。2.と3.は大部な分、詳細で事例も詳しく載っている。
- デジタル化・アーカイブ構築には4つのフェーズがある。
- 基礎知識の取得と準備
- デジタル化
- 公開
- 運用
- フェーズ1は大きな土台。きちんと作るのが大事。資料そのものについての基礎調査*1を行い、デジタル化する資料の選定・補修を行う。
- デジタル化の計画策定を行う。この時にメタデータの基本設計もするのが良い。ガイドラインでは2.が特に詳しい。
- 各ガイドラインにはデジタル化仕様書のサンプルも載ってる(参考になりそう)
- 資料の権利確認・処理。
- フェーズ2ではまずデジタル化作業。作業フローはガイドライン1.にシンプルにまとめられている。
- デジタル化作業後、データの品質評価。
- データの保存サイクル、バックアップ、記録媒体と再生機器の選択などを定め、保存用メタデータを構成する。
- フェーズ3では公開にあたって、権利確認・処理を再度行い、公開用メタデータを構成する。
- フェーズ4は運用と人材育成・データの長期保存・アウトリーチについて。ガイドライン2.〜4.に特に詳しい。
- デジタル化計画の再検討、人材と教育、組織と予算の維持、災害に備えた分散バックアップなど。データの長期保存やシステムは、次々に新しいものが出てくる。ガイドラインのみに頼らず自力で最新の動向もつかむこと。
- フェーズ1〜4の各段階は「資料基盤」「社会基盤」「技術基盤」の3つの視点からもまとめることができる。
資料基盤:資料の基礎調査・選定・補修、メタデータ構成
社会基盤:デジタル化計画の策定、権利処理、運用・人材育成・データの長期保存・アウトリーチ
技術基盤:デジタル化作業・品質評価・保存や媒体変換・コンテンツ作成
- 3つの基盤が三位一体で機能することが必要。
- まとめ:文化資源デジタル化は実際のプロジェクトが先行、体系的理論は遅れている。実践と理論双方の発展が必要。
- 自分だけでは取っつきにくいガイドラインの、ざっくりと噛みくだいた説明を聞けて良かった。
- アーカイブを構築することも大変だけど、メンテナンスして長く運用し続けていくのも大変。お金も出にくいし人も入れかわるし、と我が身を振り返りつつ思った。その意味では、フェーズ1〜3はもちろん、フェーズ4を特に考えたい。